2020/01/10背景変更 裕次郎灯台

故 森 英二氏を偲ぶ “ごみゼロ・ウェイスト” 

 私が逗子市廃棄物減量等推進員になったのは平成28年8月からで任期2年も後を継ぐ人がいないこともあり現在も継続中で令和4年7月まではその任にある。

f:id:meijizuyou:20200812193740j:plain  逗子市環境クリーンセンター

  (六浦に抜ける池子トンネル手前の山頂にある)

 この推進委員は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」により、『一般廃棄物の減量のための市町村の施策への協力その他の活動を行う』とし、また「逗子市廃棄物の減量化、資源化及び適正処理に関する条例」と「施行細則」により『減量化、資源化、一般廃棄物の適正処理及び地域の清潔の保持に関する市の施策への協力その他の活動を行う』とうたっている。要するところ、ごみステーションの定期的なパトロールを通してごみ分別の指導、及び啓発によりリサイクル化の促進と燃やすごみの減量化を図るボランティアである。市内各家庭に“ごみと資源物の収集カレンダー”が配られているので地区により出す日は異なるが自分の地区のカレンダーに従って朝8時~8時30分に出せば収集車が9時頃には来て回収していくことになっているため通常9時前までに巡回は終えるようにしている。

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 リサイクルごみの紙類、布類、アルミ缶、スチール缶、家庭金物のうちアルミ缶だけは売上としてごみステーションの該当自治会に収入として入金があり、私の属する自治会では平成31年度年間45,000円の収入があった。自治会に割り当てられたこの役を引き受けたのは他に受ける人がいなかったこともあるが、森英二先輩が葉山でごみ減量に特に力を入れていたことも頭にあった。ごみは種類により処理施設が異なり分別されていないごみが入ると処理施設の故障、設備の延命化の弊害になり、燃やすごみの削減は費用の大幅削減になるので、葉山町財政の赤字肥大阻止のため森さんが力を入れていたと思う。ごみ問題はどう処理するかではなく、いかに減らすかが問われている。

 

 7月27日前葉山町長だった森英二当支部顧問の訃報が届いた。当校友会の設立から町長就任まで長年幹事長を務めていただいていたこともあり、追悼の意味を込めて森さんが取り組んだ“ごみゼロ・ウェイスト”について述べてみたい。

 

f:id:meijizuyou:20200812232634j:plain  葉山町クリーンセンター

     (葉山町福祉文化会館の先にある)

f:id:meijizuyou:20200813113357j:plain   葉山浄化センター 

         (逗葉新道料金所近くの山腹の中にある)

 (トンネル方式の「クリーンカプセル下水処理場」で山腹にトンネルを掘削し、その部分に汚水を浄化する水処理施設を収納するようになっている。葉山町は平坦地が少 なく、海岸沿いの狭い平野部は市街地となっており、下水処理場を建設できる平坦地を確保することが困難である。そこで山腹にトンネルを掘削し、汚水を浄化する下水処理施設を収納した。これにより土地の有効利用が図れるだけでなく、においも出さないといった効果がある。一色のそうてつローゼン脇の山頂に一色ポンプ場がある。)

*平成4年に建設大臣の認可を受け平成13度を最終目標年次とする葉山町の公共下水道工事計画(建設費284億円)において平成11年3月長柄に葉山浄化センターの共用をみた。その後この一角に新たな“し尿投入施設設置計画”が作られたが平成25年9月既存の施設活用で費用の大幅削減で決着している。この一連の計画推進で各地域にあった既存の浄化槽(コミュニティープラント・通称コミプラ)が廃止になり訴訟問題もあって森さんも深く関わっていましたがこのブログでは省略。


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1.ゼロ・ウェイストとは (一般に下記となっています)

・「ゼロ(zero)ウェイスト(waste)「ごみ・無駄・浪費をゼロにする」の意味。 

 オーストラリア発のごみ減量化政策。世界各地でごみの大幅減量に成功する自治

 が続出し、日本でも徳島県上勝町(2003年)、福岡県の大木町(2008年)、熊本

 県水俣市(2009年)、奈良県斑鳩町(2017年)がゼロ・ウェイスト宣言をしていま

 す。

・「処理施設を持つ代わりに、ごみを減らす」「ごみを減らせば、施設は要らない」...

 高額な施設建設にお金をかけず、ソフト面での減量化施策に重点を置きます。

・合言葉は「4つのL」...「Local(地域主導)」「Low Cost(低コスト)」「Low Impact(環境負荷が低い)」「Low Tech(最新技術に頼らない)」が指針です。

 

2.葉山町のごみ処理広域化

    (*森英二さん町長 平成20年1月20日~平成24年1月19日)

 平成 9年5月  ごみ処理広域化に関する国の通知

 平成 10年 3月 神奈川県がごみ処理広域化計画策定

        横須賀市鎌倉市、逗子市、三浦市葉山町(横須賀三浦ブロック)

   県下9ブロックを設定)

 平成 18年 2月 横須賀市三浦市葉山町の2市1町計画 

           (鎌倉市、逗子市は加わらず)

 平成 18年4月 鎌倉市、逗子市ごみ処理広域化覚書締結(平成22年覚書解除)

 平成 20年 6月 葉山町は2市1町ごみ処理広域化計画から離脱

           (森さんの町長選挙時の公約)

 平成 21年 3月 横須賀市三浦市ごみ処理広域化基本計画  

   平成  28年 7月 鎌倉市、逗子市、葉山町ゴミ処理広域化覚書締結

   平成  29年7月 廃棄物の焼却処理の試行に関する契約書締結 

                               逗子市は葉山町可燃ごみ受入れ開始

 平成  30年 3月 逗子市と葉山町との可燃ごみの焼却処理の事務委託と、葉山町

        逗子市とのし尿及び浄化槽汚泥処理の事務委託に関する協議書、

        規約、協定書締結

 平成  30年 4月 上記事務委託開始

 平成  31年 3月 逗子市と葉山町との容器包装プラスチックの処理施設の整備運営

                               に関する事務の事務委託に関する協議書、規約、協定書締結。

 平成  31年 4月 上記事務委託開始

 令和 2年 8月 平成28年7月締結の覚書を解除し、鎌倉市、逗子市、葉山町ごみ処理

                               広域化実施計画を策定、確認書締結

f:id:meijizuyou:20200813093817j:plain 逗子市浄化管理センター

   (桜山の葉山より海に面した場所にある)

3.基本理念

 平成28年7月締結の覚書から基本理念として「資源の無駄をなくし環境負荷の少ない循環型社会の形成に資するゼロ・ウェイストを目指します。」とうたっています。令和 2年8月策定の実施計画はこれを受け継ぎ、合わせて「連携して取り組むことで環境面、財政面を考慮した安心安全で効率的かつ持続可能な廃棄物処理体制の構築を目指すとともに廃棄物の3R(Reduce発生抑制, Reuse再使用,Recycle原材料として再利用)の推進を図るものです。」と記しています。  

 

4.森英二さんの選択

 葉山町NPO法人環境ファミリー葉山を立ち上げ、内外のごみ政策を研究、森さん

の「ゼロ・ウェイスト」政策を葉山町で提唱したのは安藤忠雄氏でした。

(2年後66歳の若さで亡くなっている。)

f:id:meijizuyou:20200812193334j:plain 森町長(中央)

 安藤忠雄さん(左)と「ゼロ・ウェイストを考え・進める会」の野中康司さん(右)f:id:meijizuyou:20200812220539j:plain

 安藤氏は「葉山のゴミゼロ(ゼロ・ウェイスト)から学ぶゴミ問題」の文章でこう述べていました。『森さんは1月20日に町長に就任し、その10日後に2市1町ごみ処理広域化「地域計画」に判子を捺せと求められ、捺さないと戻した。そして、広域処理から離脱し自区内処理(単独処理)へと方針転換をすることを表明した。実は2市1町ごみ処理広域化については議会へ詳細な説明もされていなかった。判子を捺していたら大変なことになっていた。』

 一旦横須賀市三浦市葉山町で行うことにしたゴミの広域化を町長に就任してここから脱退し、推進始めていた横須賀市三浦市から賠償訴訟を起こされ敗訴の場合は個人負担という環境に置かれたほどでした。当時ごみのゼロ・ウェイストに理解はあっても2市1町広域化計画からの離脱は反対者が多かったようです。議会でS議員からゼロ・ウェイストの好評価と合わせて離脱の厳しい質問をされその回答を通じ森さんの信念を多くの町民に少しずつ理解させる契機になったのではと思われます。ゼロ・ウェイストは人口1,500人と四国で一番少ない上勝町(かみかつちょう)で成功しても人口33,000人の葉山では無理という声も多かったのだと思います。 

 それでも森英二さんは、上勝町NPO法人「ゼロ・ウェイストアカデミー」の事務局長松岡夏子さん(当時27歳)を口説いて任期付きの葉山町職員にしてごみ減量担当にしています。

f:id:meijizuyou:20200812193446j:plain 松岡夏子さん

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 松岡夏子さんは「5年間でごみ半減はゴミが資源と実感できる仕組みが整えば無理な数字ではない」と当時述べています。現在は三菱UFJリサーチコンサルティングで副主任研究員として活躍されています。また「ゼロ・ウェイストアカデミー」には外国から見学者も多く理事長の坂野昌女史(30歳)は昨年1月、スイスで開かれた世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)で共同議長を務め、次世代リーダーとしても注目を集めている方です。プラスチックによる海洋汚染が世界的に注目される中で、「サーキュラー・エコノミー(循環型経済)」というキーワードは会議でも重要なトピックの一つで、坂野さんは最も目立った日本人の一人だったようです。

f:id:meijizuyou:20200812193537j:plain 坂野 昌さん

 一方町役場の環境課に若手の服部雄一郎さんがおられごみのゼロ・ウェイスト運動の普及に先頭になって尽力されました。服部さんは町として将来を嘱望されていましたが米国UCLAバークレー校大学院に留学を機に退職されたのは森さんにとっては残念に思われたと思います。服部さんは帰国後べア・ジョンソンの著者「ゼロ・ウエスト・ホーム」を翻訳され現在は高知県東部の香美市(人口約26,000人)で自然と共に暮らしながら、「ゼロ・ウェイスト」に取り組んでいるそうです。その一番の収穫は、「ごみ出しの手間が激減し、生活の快適さと地球環境への負担減が一致したこと」と述べておられます。

f:id:meijizuyou:20200812221017j:plain   服部雄一郎さん夫妻

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 森さんが日本で最初にゼロ・ウェイストを宣言した上勝町に直接コンタクトとして中心的な事務局長を葉山町職員にした行動力には敬意を払わざるを得ません。また日本でのゼロ・ウェイストに関与した著名な方が葉山町に絡んでいたことも葉山町が日本における人口3万人を超える町でのゼロ・ウェイストの草分けと言っても良いのではと思います。 

 逗子市廃棄物減量等推進員として池子にある逗子市環境クリーンセンターを見学し、葉山から受け入れるごみがどのような道路を通って池子のクリーンセンターに来るか等の説明も受けました。また説明会等で生ごみ削減のためのコンポスター(密封式のプラスチック容器の中に土と生ごみを入れて微生物の力で生ごみを分解し堆肥をつくる容器)や葉山の松本信夫さんが考案したというバクテリアdeキエーロ(堆肥不要の人のために蓋を密封しない、水を切らないでよく土に埋めるだけの容器)を見ましたが、森夫人はコンポスターの普及で希望者宅に届けて尽力されていました。逗子市では桐ケ谷市長が助成金制度で普及を推進しています。

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 葉山町クリーンセンターは老朽化で昨年10月再整備に関する住民説明会が開かれ令和3年~令和5年に解体建設、令和6年供用開始予定とのことです。(現施設:ごみ焼却施設S52年4月稼働、H22休止、不燃物処理施設S53年4月稼働、し尿焼却施設S56年10月稼働、H21休止。)≪葉山浄化センター稼働まで横浜市に委託、この間のし尿浄化槽汚泥処理設備に関する葉山町民オンブスマンの活躍はこの記事では省略≫ 

 葉山町は逗子市とのごみ処理広域連携で葉山町はし尿浄化槽汚泥処理を、逗子市は燃やすごみと容器包装プラスチックの処理を行うことにし、新しい施設はゼロ・ウェイストの推進に寄与する施設にするという説明がなされています。

 横須賀市三浦市は2市でごみ処理広域化を進め横須賀ごみ処理施設「エコミル」の稼働に伴い、令和2年1月からごみの分別が変更になっているそうです。  

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 森さんの選択は、その後の松尾崇鎌倉市長、平井竜一逗子市長→桐ケ谷覚市長、山梨葉山崇仁町長に否応なく引き継がれてこの3市のゴミ広域化計画となっています。もし葉山町横須賀市三浦市とのごみ処理広域化の中に居た場合、どうなっていたのかは判りません。日本各地でごみの分別は既に常識になっていますが、心無い人が分別を無視している現実もあり各ごみステーションでは目に見える形でいろいろ工夫しているようです。

 森さんの後を引き継いだ山梨町長は公約の“ごみ戸別収集”を平成26年6月から始めています。共有のゴミステーションからではなく、1万4000世帯余りの全戸を訪ねて収集する戸別収集は導入当初、住民からクレームの嵐。分別が十分でないごみを収集しないままにして、怒りの電話をいただくことも多かったと言います。しかし堤崎輝人氏他若手職員の住民に丁寧に応対する仕組みの導入や、収集の効率化など、積極的に新たな取り組みへのチャレンジでクリーンセンターの改革が始まり今も続いています。

 f:id:meijizuyou:20200813101744j:plain   葉山クリーンセンター職員

  (左から、堤崎輝人さん、内田自栄所長、小山拓さん、仲田聖也さん)

 

 森さんが町長に就任した時、葉山町のごみ焼却経費は年10億円以上でこれは一般会計の1割に当たる額だったそうで、借金が下水道債10,258百万円、一般会計債5,815百万円の計160億円程有りましたが、4年後この借金は149億円と11億円減っていました。ごみ処理や下水道事業の大幅見直し等によるものではと思います。平成27年度の借金は133億円と公表されていますので退任後も借金減額の流れが続いているようです。

 神奈川県は平成30年(2018年)「プラごみゼロ宣言」をしてプラスチック製のストローやレジ袋の利用廃止と回収を呼びかけ、令和20年(2030年)までにプラスチックによるゴミのゼロ化を目指すことになりました。山梨町長も即座に賛同し「はやまクリーンプログラム」を独自に掲げ、公共施設の自動販売機でペットボトルの飲料を扱わないことに決めています。海洋汚染を防止し美しい葉山の海を永続的に守るためです。森夫人は神奈川県ワンウエイプラ削減実行委員会委員をつとめられています。またペットボトルの蓋を収集して泉区の障害者施設で選別、破砕後、回収業者に渡しリサイクル代金430個1㎏15円のうち10円はユニセフに寄付、5円は障害者団体に寄付となるそうです。ユニセフを通じ世界の子供たちへのワクチン代は1人20円とのこと。

 

f:id:meijizuyou:20200813001626j:plain   森 英二夫妻

   (左は三面子の孫 高木さと子さん)

 葉山は昔から文化人が美しい海を愛した町でもあり、当校友会が森町長の時に葉山に住み、葉山で亡くなった川柳界の3大恩人岡田三面子(本名・朝太郎、平和主義の宰相吉田茂の師)の川柳碑を作りましたが、葉山の地ではなく逗子市環境クリンセンターのある池子のやや離れてはいますが同じく山の上に仮建立してあります。森英二さんの追悼で思い出されたので付記しておきます。

                                (足立)