十日夜(とうかんや)のお月見会に参加しました
今年は9月26日(土)に「中秋の名月のお月見会」のご案内をいただいて参加、この時十三夜のお月見もしないと片月見で良くないとのことで、10月25日(土)に「十三夜のお月見会」開催のご案内もいただいて参加しました。東逗子駅前のビル2階の「スタジオ955とサロンナナ」での会場主 三武豊蔵・八桑みどり夫妻の心温まるもてなしと“みどりさんの料理と舞”を堪能することとなりました。十三夜のお月見会の際に、十五夜そして十三夜に続き十日夜(とうかんや)のお月見のあることが話に出ました。昔からこの3日間が晴れてお月見ができると縁起がよいとされてきたので、「十日夜のお月見会」をお願いしたところ11月21日(土)午後6時より開催していただきました。全国広しといえども同じ場所でこの3回のお月見をしたのはそう多くはないと思います。
十日夜(とおかんや)とは、旧暦10月10日の夜に行われる収穫祭で、「刈上げ十日」などともいわれます。稲の刈り取りが終わって田の神が山に帰る日とされ、北関東を中心に甲信越から東北地方南部にかけて広く行われる行事で、西日本の刈上げ行事である「亥の子(いのこ)」と対応しているそうです。田んぼを見守ってくれた案山子を田の神に見立てて田から内庭に移して供え物をする案山子上げが行われたり、子供が藁鉄砲を持ち、集団で各家を訪れ地面をたたいて歩き地面の神を励ましたり、十五夜と同じく月に供え物をして稲作、畑作の収穫を感謝する行事です。10月11日から17日までの7日間は神々が出雲に行ってしまうので、まさに十日夜は神に祈って来年の豊作を出雲で議(はか)ってもらう最後の日でしょう。
さてお月見がメインではない十日夜ではありますが、お月見会ですので、会場に入ると窓側にまず「月とウサギの暖簾」が目に入り、床には黒い布(ビニール?)で大地をアレンジして、その上にトウガラシの枝を添えたススキが入った大きな花瓶が隠すように置かれてありました。別の花瓶には烏瓜や赤い実を付けたウメモドキ、花のような赤と黄色の葉の植物も印象深く見えました。大地の上には白菜や葉付き大根、そして南瓜のような大きな黄色の柚子が置かれてあり、まさに収穫祭を感じさせられました。この飾り物は秦野まで行って入手してきたと聞き、小生から開催をお願いした手前もあり、三武夫妻の客をもてなす気配りに頭が下がる思いをしました。
テーブルは今回参加者が顔を合わせられるように正方形に並べてあり、大皿に盛り付けした料理が真ん中に置かれ各自の皿に採って食べるようになっていました。料理は、秦野で仕入れた、からし菜2種、柳松茸、青と黄(白?)のブロッコリーなど珍しい物を含む山の物に、にんにく入り醤油で味付けしたと思われるマグロのぶつ切りやエビのから揚げ煮付けの海の物も添えられ、トリのから揚げに加え栗、大豆もあって十五夜(芋名月)、十三夜(栗名月)の名残を感じさせました。なお向寒の季節に配慮して鎮咳去痰作用があり鉄分を多く含むという銀杏が銘々に配られました。ビール、日本酒、ワイルドターキーを飲み、料理を口にしながら、小生から会場入り口で配った「十日夜のお月見会」資料の説明を少ししました。
俳句に蕪村が神戸の日本三大夜景になっている麻耶山で詠んだという「菜菜の花や月は東に日は西に」から月は太陽と同じような東から南を通って西に沈むが南半球では東から出て北を通って西に沈む。月の中のウサギは逆立ちしている。又浄土宗の「お十夜」は「この世で十日十夜善いことをすれば、仏国土で千年善いことをしたことに勝る」という教えをもとにする法要なので「十日夜の1日善いことをすれば、仏国土で百年善いことをしたことに勝る」のではとの説明もしました。この「十日夜のお月見会」はまさに「善いこと」だったと思います。
参加者の中には幼馴染にもかかわらず数十年振りに会ったという人や沖縄、台湾出身の方もおられて話がはずむなか、月に因む歌など出て、恒例になった西山さんの詩吟朗詠もありました。
みどりさんの「舞」は今回予定していなかったのですが、参加者の風流を共に楽しむ心意気に感動されたのか、急きょ会場隅の棚にあった布を身にまとい「舞」を披露していただいたのには感激でした。二個のぼんぼりに明かりを灯し、1枚布を肩半分出した纏い方は、まるでギリシャ神話に出てくる月の女神ダイアナを思わせる容姿で「舞」の伴奏曲は古代ギリシャの調べを録音したものとのことでした。「舞」に気丈夫さが滲み出ていました。
なお窓の外には十日夜の月が出ていて、皆で眺めながら今年初めてでしたが、この3回のお月見会を楽しめたことに感謝しつつ、明日出雲に旅立つ逗子葉山の神々に別れを告げました。当校友会からの参加は主催者の三武豊蔵さんを除き、森・西山・小川・足立の3回参加者に今回初の柳生の4名でした。
「十日夜のお月見会」の解説にあった月に因む歌及び朗詠の歌を記しておきます。
俳句 - - - 十日夜・亥の子とも季語は初冬
十日夜 星殖(ふ)え子らに 藁鉄砲 大野 林火
臼音は 麓(ふもと)の里の 亥の子かな 内藤 鳴雪
眼鏡して 古日記見る 亥の子かな 巖谷 小波
短歌 - - - 十日夜・亥の子を入れた短歌を知りません 向寒の短歌
をぐら山ふもとの里に木の葉散れば 梢に晴るる月を見るかな 西行 法師
うちむかう月は一つの影ながら うかぶは千々の思いなりけり 荷田蒼生子
赤き実を 尋ねて来る冬山に ふと見上ぐれば 十日夜の月 足立 游庵
東の野にかぎろひの立つ見えて かへり見すれば月かたぶきぬ
柿本人麻呂 (西山さん朗詠)
漢詩 - - - 十日夜・亥の子を入れた漢詩を知りません 下記は李白の漢詩盗作
雲思衣装 月想容 雲に衣装を思い 月に容(かたち)を想う
乾風払窓 七華濃 乾風窓を払いて 七(ナナ)の華 濃(こまやか)なり
若非 此十日夜祝 若(も)し此の十日夜を祝わざれば
会 向神仙月下 逢 会(かなら)ず神仙の月下に向いて逢わん
(注釈) 美しい雲は貴妃の衣装のよう 美しい月は貴妃の容貌のよう
初冬の風は(955)の窓を吹き渡り ナナの華は濃やかにきらきらと輝く
ああ!こんな素晴らしい祝いは 此の十日夜か
神通力を持った仙人が居る月光のなかでしか めぐり逢えないだろう
静夜思 李白 (西山さん朗詠)
牀前看月光 疑是地上霜 牀前月光を看る 疑うらくは是れ地上の霜かと
挙頭望山月 低頭思故郷 頭を挙げて山月を望み 頭を低れて故郷を思う
追記:3回お月見会を開催していただいた三武豊蔵・みどり夫妻に感謝して
「地球から見える月の形30日の絵」に参加者全員で署名して三武夫妻に
お渡ししました。(*額に入れてお店に暫く飾ってくれるかな。)
(三武夫妻の新生活祝歌添書)
すすき野は 寂び静まりて からすうり 炭火のごとく燃え盛りおり(游庵)